おはようございます。朝塾です。
古典学習に苦手を感じる人の多くは、「言葉わからないし、難しいこと言ってそう」というイメージから、遠ざけているケースがあります。まずは現代語で概要をつかみ、そこから古典文法や解釈に移っていきましょう。こちらでは、現代語で概要をつかむために一部抜粋した古典の名作を紹介していきます。気楽に楽しむくらいの気持ちでやっていきましょう。
今朝は、「宇治拾遺物語(うじしゅういものがたり)」より。宇治拾遺物語は、鎌倉時代初期に書かれた説話集(せつわしゅう。民話。伝説)です。誰がいつ書いたのかはわかっていません(作者、編者、成立年、未詳)。全部で197話からなる一冊ですが、内容には、今昔物語と同じとされる話が82話、古本説話集と同一とされる話が22話、古事談と同一の話が20話ほか、様々な文献と共通するものも入っています。今でいう、オムニバス的な一冊です。有名なのはこちらの一節。
「天竺(てんじく。インド)の事もあり、大唐(だいとう。中国)の事もあり、日本の事もあり。それがうちに(そのなかには)貴き事(たふときこと。尊い(とうとい)こと)もあり、をかしき事(おもしろい話)もあり、恐ろしき事もあり、哀れなることもあり、きたなき事もあり、少々は空物語(そらものがたり。空想)もあり、利口なる事(滑稽(こっけい)話)もあり、様々やうやうなり(種々様々です)」つまり、いろんな話が入ってるよーということです。たくさんあるので、一つだけ紹介します。
【吉野山で鬼に出会った 日蔵上人(にちぞう しょうにん)】(134話 朝塾ショートバージョン)
昔、日蔵上人(しょうにん。お坊さん)が吉野山の奥で修行していた時、鬼に会った。背は2メートル以上、体は紺青色(こんじょういろ)、髪は真っ赤で、腹がふくれ、肋骨(ろっこつ)はゴツゴツしていて、脛(すね)は細い。鬼は泣きながら上人に言った。
「私は五百年も前の人です。人を恨んだため、鬼に生まれ変わりました。恨む相手を殺し、その子、孫、ひ孫、玄孫(やしゃご)まで全員殺し切って、今は殺す者がいません。(中略)敵(かたき)の子孫は絶え果てたのに、私一人が怒りの炎に焼かれています。こんな心を起こさなかったら、極楽にも天界にも生まれられたでしょうに、こうして永劫の苦しみを受けているのです。他人に対して恨みを残すのは、そっくりそのまま自分の身に返ってくることだったのです」
鬼はやがて山の奥へと消えていきました。
日蔵上人は、かわいそうに思って、その鬼のために罪滅ぼしになるような、様々な回向(えこう。供養(くよう))をしたという。
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